FOR ME NY

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名古屋大学附属高校で特別WSを開催

posted date / 2021.1.8

FMNYアドバイザーの鈴木健介です。今日は、2020年12月17日に名古屋大学教育学部附属高等学校で実施したFMNYの特別ワークショップ(WS)についてご紹介します。

2019年12月に同校がSuper Science High School(SSH)事業の一環としてアメリカ・ニューヨークで海外研修を実施した際、FMNYが企画・運営する特別ワークショップ「Celebrating Being You」を開催しました(詳細はこちらのブログ記事をご覧ください)。先生方からのご好評につき、今年度も引き続きワークショップの機会をいただくことになりました。名大附属学校は、代表の甲斐万里子と私・鈴木の出身校でもあることから、母校の教育活動にこのような形で携わることができることもまた、たいへん光栄なことです。

今回は、高校1年生の全生徒を対象に、90分間のワークショップを開催しました。特別講師には、Vince Ricci氏を特別講師として招聘し、各種インプロアクティビティを実施したほか、FMNYのスタッフ3名によるミニトークセッションも開催しました。

「オンライン×対面」というはじめての試み

今回のワークショップは、私たちにとっては、様々な意味で挑戦的な取り組みでした。

まず、高校1年生の全生徒・120名という大規模な参加者に対するワークショップであったことが挙げられます。これまでのワークショップは、多くても30名程度の小規模なものでした。120名ともなれば、開催形態やアクティビティの内容についても、これまでと全く同じというわけにはいきません。実施に当たっては、特別講師のRicci氏と綿密な打ち合わせを重ねました。

 

もう一つの挑戦は、コロナ禍での開催ということでした。当初は、体育館等の大規模な会場で、換気等の感染対策を取りながら、「三密」を回避しつつ、完全な「対面形式」での実施を検討しておりました。

しかしながら、11月に入り全国的な感染拡大の傾向が顕著となり、FMNYは、対面での実施の場合、生徒・教員とスタッフの安全確保が保証できないと判断しました。そこで、オンラインと対面を融合した、ハイブリッド形式でのWS開催を提案しました。

 

このハイブリッド型ワークショップでは、FMNYのスタッフ、特別講師、そして参加者は全員が異なる場所からワークショップに参加します。

具体的には、甲斐はNYから、坪田は千葉から、特別講師のRicci氏は東京からオンライン会議システムZoomを使ってワークショップを進行します。参加者(120人)は、5つのグループに分かれ、それぞれ別の教室から参加します。5つの教室に分かれることで、一教室に大人数が密集することを回避しました。

各教室には、Zoomミーティングの画面がモニタ-やスクリーンに映し出され、講師らの説明を受けることができます。また教室にはWebカメラが設置されており、教室の模様は、リアルタイムで講師らもモニターできるようになっています。さらに、現地スタッフとして私・鈴木が名大附属高校に赴き、各教室の状況を確認しながら、トラブル対応に当たりました。

「人生のリハーサル」

ワークショップの冒頭、代表・甲斐が参加者に語りかけます:

自分の人生を「庭」に例えた時、その庭に「育てたい花」はありますか?その芽は出ていますか?種を植えたのに芽が出ないものはありますか?水を一生懸命あげているのに育たないものはありますか?「引っこ抜きたい雑草」はありますか?人の庭をみて焦ってしまうことはありますか?


私たちは、得意・不得意なこと、才能があること・ないこと、自信があること、心配ごと、強さ・弱さなど、様々なものを抱えながら生きています。私たちはそれらをどのように見つけるのでしょうか?言い換えれば、どのように「人生の庭」に種を蒔き、水をやったり、邪魔なものを引っこ抜いたりしながら、自分らしい「人生の庭」を作り上げていくのでしょうか?

そして、今日のワークショップは、「人生のリハーサル」ともいえるインプロと、心理学、脳科学を掛け合わせて行う体験型のワークショップであることを説明します。

最初は、「一体何が始まるのか?」と、きょとんとした表情を浮かべる生徒もいましたが、アイスブレイク・アクティビティが始まると、徐々に生徒たちの表情が和らいでいくのがわかりました。

Sound Ball で体感する「投げかけること」と「受け入れられること」

今回は、大きく2つののアクティビティを実施しました。

最初のアクティビティはSound Ball。
10人程度のグループで円を作を作り、最初のプレーヤーは、目に見えない「ボール」を、「音」とともに、他の誰かに投げます。受け取る側は、その「ボール」を受け取ると同時に、発せられた「音」を復唱します。そして、新たな「音」とともに、次のプレーヤーへとボールを投げていくのです。

ボールの大きさや重さ(例えばゴルフボール、ボーリング玉など)、そして音(例えばシュッや、ポヨーン等)は全て自由です。例えば、ボーリング玉のような重いボールを、勢いをつけて投げるジェスチャーや音に対しては、受け取る側も、それに応じたジェスチャーをしてみよう、と参加者に促します。

 

インプロでは、自分の心や体から出てきたアイディアを躊躇せずに表現することが重要と考えます。自分の中から出てきたものを素直に表現することが、自由で豊かな発想を生むと考えます。

 

そして、ボールのやり取りにおいて重要になるのは、投げる側と、受け取る側がちゃんとアイコンタクトをして、コミュニケーションを取ることにあります。さもなくば、「投げっぱなし」となりキャッチボールにはならないのです。

ある種、とても単純なゲームなのですが、このアクティビティを通じて、参加者は、自分の投げたボールを相手に受け取ってもらうためには、どうすればいいのか、つまり、誰かに「投げかけること」とはどういうことなのかを考えます。

そして相手に受け取ってもらえること、つまり自分が「受け入れられる」という感覚を体感します。すなわち、コミュニケーションの基本が「相互性」にあるということを体験的に感じ、学んでいくことができるのです。

 

アクティビティ後には、このゲームを通じて何を感じたかをグループで話し合い、講師陣や他の教室から参加している生徒にも共有してもらいました。

チームのエネルギーを感じるYes! Game

続いてのアクティビティは、Yes! Game。
これは、インプロの基本である「Yes, and …」の哲学に基づいたゲームです。

「Yes, and …」の哲学とは、例えば相手が何かを言ったり提案したりした時には、まずはそれを受け入れ(Yes)、そこに新たなアイディアを付け加えていこうという、「No, but …」と対極にあるマインドセットのことをいいます。

Yes! Gameでは、まず会場の誰かの提案から始まります。例えば「ジャンプしよう!」と声を上げたとすれば、それに対して会場の生徒はみんなで「Yes!」といって、実際にジャンプします。

そして、次の提案へと続いていきます。提案は(危険なことや誰かを傷つけることでなければ)何でもありです。片足立ちだったり、机に突っ伏して寝るだったり、生徒は思い思いの提案をして、それを会場にいる生徒みんなで受け入れ、実践します。

 

Yes!といって、みんなで同じ動きをすることで、教室にいる参加者の間にチームとしてのエネルギーが生まれます。もしだれかが、「No, but …」といってゲームを中断させてしまうと、教室の中に流れていたエネルギーのフローも途切れてしまいます。

 

「受容」こそが、チームビルディングの基本であり、チーム力の源泉となることを体感することが、このゲームのポイントです。

 

一方、全ての提案に対して「Yes!」と言うことしか許されなかったとすれば、しまいには疲れてしまいます。受容が基本とは言いつつも、自分の空間や、自己と他己の境界というのも重要であることがこのアクティビティのもう一つのメッセージです。

ミニ・トークセッション「いま伝えたいこと」

FMNYスタッフとの記念写真

ワークショップの最後には、FMNYスタッフの3人が、それぞれ、高校1年生にいま伝えたいことをお話ししました。

附属高校の卒業生でもある甲斐は、「辛いときや苦しいときに、一度立ち止まって、自分を褒めること、認めることを忘れないでほしい。『You are enough. You do not need to be perfect.』という言葉を贈りたいと思う」と、自身が大切にしている言葉を紹介しました。

そして、坪田からは、「自分に対してリミットをかけるのではなく、心の声を聞いてみてほしい。自分の心が求めることを続ければ必ず必ず花は咲く。」と語りかけました。

私・鈴木は、自身の留学体験なども交えつつ「人生とは、スゴロクのようなもの。うまくいかない時は、『今はただ悪い目にいるだけ』だと思ってみることも大事。サイコロを振り続ければ、きっと前に進む。」とエールを送りました。

これからもFOR ME NYは進化し続けます

たくさんの「挑戦」が詰まった今回のワークショップですが、現在、慶應義塾大学理工学部の満倉先生のご協力のもと、ワークショップに参加することで、EQ(感情知能指数)や、「Innovation and Global Thinking」にどのように影響があったかをPOMS(Profile of Mood States)という手法を用いて調査しています。この調査結果も踏まえつつ、これからもFMNYはプログラム開発に一層力を入れていく予定です。これからもFMNYの進化にご期待ください。

最後に、本企画の実施にご尽力くださった名大附属高校の三小田教諭はじめ教職員の皆様に心より感謝を申し上げます。