FOR ME NY

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名古屋大学教育学部高等学校にて特別ワークショップを開催(1)

名古屋大学教育学部高等学校にて
特別ワークショップを開催(1)

posted date / 2022.3.7

FMNYアドバイザーの鈴木健介です。
2022年2月3日と17日に名古屋大学教育学部附属高等学校で実施したFMNY企画・運営の特別ワークショップ(WS)について、2回の連載でお伝えします。

 

弊社は、2019年12月より同校の生徒を対象にした特別ワークショップを毎年提供して参りました。詳細については、過去のブログ記事をご覧ください(2019年12月にニューヨークで実施したワークショップ2020年12月にオンラインで実施したワークショップ

先生方からのご好評につき、今年度も引き続きワークショップの機会をいただくことになりました。名大附属学校は、代表の甲斐万里子と私・鈴木の出身校でもあり、母校の教育活動にこのような形で携わることができることもまた、たいへん光栄なことです。

 

今年度は、高校1年生の全生徒120名を対象に、90分間のワークショップを2日間に分けて実施しました。Vince Ricci氏を特別講師として招聘し、各種インプロアクティビティを行ったほか、FMNYのスタッフ3名によるミニトークセッションも開催しました。

「オンライン×対面」によるハイブリッドWS

オミクロン株の全国的な拡大が進む中、生徒・教員とスタッフの安全確保の観点から、完全な「対面形式」での実施は困難であると判断しました。

そこで、昨年度に引き続きオンラインと対面を融合した、ハイブリッド形式での開催となりました。このハイブリッド型ワークショップでは、FMNYのスタッフ、特別講師、そして参加者は全員が異なる場所からワークショップに参加します。

 

具体的には、甲斐はNYから、坪田は千葉から、特別講師のRicci氏は東京からオンライン会議システムZoomを使ってワークショップを進行します。参加者(120人)は、3教室に分かれ、それぞれの教室から参加します。またソーシャルディスタンスを確保するために、教室内でも全員が着席状態で参加する形式を取りました。

各教室には、Zoomミーティングの画面が電子黒板に映し出され、講師らの説明を受けることができます。また教室には部屋全体が見渡せるような形でWebカメラが設置されており、教室の模様は、リアルタイムで講師らもモニターできるようにしました。

さらに、当日学校を欠席した生徒もZoomで参加できるようにし、3教室とは別に、欠席者による「ブレイクアウトルーム」を作り、全員が参加できるような工夫を施しました。

 

一見、単純な仕組みのようにみえますが、画面上でアクティビティを説明したり、また参加者に「繋がり」を感じてもらうためには、様々な工夫が必要になります。

FMNYは、2020年度上半期からZoomを用いたオンラインワークショップを集中的に実施してきました。そこでの経験とノウハウが大いに生かされたこのハイブリッド型ワークショップは、ポスト・コロナ時代の新しいインプロ・ワークショップの形として大きな潜在性を持つものであると確信しています。

Imaginary Ball で体感する「投げかけること」と「受け入れられること」

ハイブリッドWSの様子

アイスブレイクとして実施した最初のアクティビティはImaginary Ball。
隣の席の人と2人組のペアを作ります。そして目に見えない「ボール」でキャッチボールを行います。
ボールの大きさ、形、重さはもちろん、ボールの飛び方や軌道も自由です。ジェスチャーや表情でボールの特徴を相手に伝えます。そして、ボールが飛んできたら、相手はその特徴を理解した上で受け取ります。例えば、重そうなボールが飛んできたのであれば、重そうに受け取ります。

 

インプロでは、自分の心や体から出てきたアイディアを躊躇せずに表現することが重要と考えます。自分の中から出てきたものを素直に表現することが、自由で豊かな発想を生むのです。

 

そして、ボールのやり取りにおいて重要になるのは、投げる側と、受け取る側がちゃんとアイコンタクトをして、(ノンバーバルな)コミュニケーションを取ることにあります。

参加者は、自分の思い描いたボールの特徴を相手にきちんと理解してもらうためにはどうすればいいのか、つまり、誰かに何かを「投げかける」とはどういうことなのかを考えます。

同時に、相手に自分の投げたボールを受け取ってもらえること、つまり、自分が「受け入れられる」ということを体感します。

 

アクティビティ後には、このゲームを通じて何を感じたかをグループで話し合い、講師陣や他の教室から参加している生徒にも共有してもらいました。

参加者からは「相手がどんなことを考えてボールを投げているのか想像しながら受け取るように心がけてみた」といった感想がありました。

チームのエネルギーを感じるYes! Game

続いてのアクティビティは、Yes! Game。これは、インプロの基本である「Yes, and …」の哲学に基づいたゲームです。

「Yes, and …」の哲学とは、例えば相手が何かを言ったり提案したりした時には、まずはそれを受け入れ(Yes)、そこに新たなアイディアを付け加えていこうという、「No, but …」と対極にあるマインドセットのことをいいます。
先ほどと同様にペアになり、まずはじめに一人が「Let’s go to the trip!」と提案します。それに対して、パートは「Yes, and let’s go to New York!」のように、相手の提案を受け入れた上で次の提案をします。

 

まずは相手を受け入れて、その上で、新たな提案を重ねていくこのゲームを通じて、チームとしてのエネルギーが生まれます。

「受容」こそが、チームビルディングの基本であり、チーム力の源泉となることを体感することが、このゲームのポイントです。

 

一方、全ての提案に対して「Yes!」と言うことしか許されなかったとすれば、しまいには疲れてしまいます。

受容が基本とは言いつつも、自分の空間や、自己と他己の境界というのも重要であることがこのアクティビティのもう一つのメッセージです。

 

アクティビティ後には、参加者から「全面的な合意だけでは、かえって関係が崩れてしまうこともある。自分の意見を言うこともやはり大切だということに気づけた」といった感想がありました。

名古屋×グローバリゼーションプロジェクト

いまからおよそ30年前の1989年には、時価総額でみた世界のトップ企業10社の中に、日本から7社もがランクインしていました。しかしながら、2018年現在、このトップ10の中に日本企業は入っていません。

その理由の一つとして、イノベーション欠如が指摘されています。

そして、2018年時価総額トップのアップル、2位のアマゾン等に代表されるアメリカのトップ企業で創出されるイノベーション源泉は、多様性から生まれる”カオス”と、議論から生まれるエネルギーではないかと言われています。

 

こうしたことを踏まえ、ワークショップ後半では、インプロを使って楽しく、そして”カオス”にイノベーションを考えるアクティビティを行いました。

 

テーマは「名古屋×グローバリゼーションプロジェクト」

 

はじめに、2人一組のペアになって”名古屋のアピールポイント/ 名古屋自慢”を考えます。Yes, and…のスタンスで、とにかくたくさんのアイディアを出します(名古屋メシや、名古屋のアミューズメントパーク等)

アイディアを出し合ったら、次は「名古屋をどのようにグローバル化していくのか、名古屋をどのような観点から国際的にアピールしていくのか」という観点でアピールの仕方を煮詰めていきます。

例えば「レゴランドとナナちゃん人形のコラボとして、ナナちゃん人形がレゴの車に乗るという映画を(ジブリパークにちなんで)宮崎駿監督のもとで製作し、その広報を名古屋が誇るアスリートにしてもらい世界に売りだそうと思う」といったアイディアが出ました。

 

最後に、出てきたアイディアを「エレベータ・ピッチ」で発表しました。(エレベーターに乗っているような)わずかな時間で、自分自身や自社のビジネスなどについてのプレゼン・アピールを行うのが「エレベーターピッチ」です。

日本のグローバル化に関する国際会議に名古屋代表として招集された皆さんが、会議のリーダーであるVinceさんにエレベーターの中でばったり遭遇し、1分間で名古屋×グローバリゼーションプロジェクトをアピールする設定でピッチを考えました。

 

発表では、ただ考えた内容を棒読みするのではなく、少しでも興味を持ってもらおうと、相手に語りかける口調で名古屋のアピールをしていたのがとても印象的でした。

短い準備時間にもかかわらず、英語での発表に挑戦したグループもあり、参加者の「インプロ力」にも驚かされました。

WSのご感想

発表を終えて記念撮影

ワークショップの最後は、「オープンセンテンス」での感想のシェアで締めくくられました。
テーマは「今日このワークショップで学んだことは・・・」。

参加者からは以下の様な、とてもポジティブな意見が出ました。

「言語以外、例えばジェスチャーなどで伝えられる情報の重要さに気づいた」

「自分が好きなことは2時間でも3時間でも楽しくしゃべっていられるけど、相手に伝えるということ、わかりやすく伝えるということは、とても難しいということに気づいた」

「相手の話を聞いて、それを受け入れて付け加えることで、話が大きく膨らんでいくということを実感できた」

「ディスカッションをする上で、相手を肯定することでとても楽しい雰囲気で議論を進められることに気づけた」

次回のブログ記事では、ワークショップ2日目の内容についてご紹介します。